昇順や降順に並べ替えするソート関数としてよく使われるnp.sort
とnp.argsort
を紹介します。
ソートはあらゆる場面で使用する基本アルゴリズムなので、この記事を通して使い方を確認しておきましょう。
np.sort
sort
関数は配列の要素を昇順にソートしたものを返しますが、一方でargsort
関数はその入れ替えられた配列のインデックスを返します。
まずは、APIドキュメントを確認してみます。
numpy.sort(a, axis=-1, kind=None, order=None)
params:
パラメータ名 |
型 |
概要 |
a |
array_like (配列に相当するもの) |
ソートしたい配列を指定します。 |
axis |
int もしくは None |
(省略可能)初期値-1 ソートを行う軸方向を指定します。デフォルトはで最も次元の低いところに沿ってソートします。 |
kind |
‘quicksort’, ‘mergesort’ ‘stable’, ‘heapsort’のいずれか |
デフォルトで使用されるソートアルゴリズムはquicksortになります。’stable’と’mergesort’はどちらもTimSortかRadix Sortになり、実際の実装はデータ型によります。 |
order |
string もしくは stringのリスト |
(省略可能)初期値None
a がフィールドの定義されている配列であったとき、どのフィールドで要素をソートするかを指定します。 |
returns:
要素がソートされた配列が返されます。
引数として指定できるものは4つあります。第一引数はソートしたい配列を指定します。第二引数であるaxis
は、どの軸方向に要素をソートをするかを指定します。デフォルトは最も次元の低いaxis=-1
になります。第三、第四引数となっているkind
とorder
は見慣れないものだと思います。kind
はソートする際に用いるアルゴリズムを指定し、order
はどのフィールドを基にソートするかを指定します。
ソートの種類については、後述します。np.sort
は、以下のように使用します。
np.argsort
np.argsort
は、ソート結果の配列のインデックスを返します。APIドキュメントは以下の通りです。
numpy.argsort(a, axis=-1, kind=None, order=None)
params:
パラメータ名 |
型 |
概要 |
a |
array_like (配列に相当するもの) |
ソートしたい配列を指定します。 |
axis |
int もしくは None |
(省略可能)初期値-1 ソートを行う軸方向を指定します。デフォルトはで最も次元の低いところに沿ってソートします。 |
kind |
‘quicksort’, ‘mergesort’ ‘heapsort’のいずれか |
(省略可能)初期値’quicksort’ データの並べ替え方のアルゴリズムを指定します。 |
order |
string もしくは stringのリスト |
(省略可能)初期値None
a がフィールドの定義されている配列であったとき、どのフィールドで要素をソートするかを指定します。 |
returns:
ソートされた軸方向内における、配列の要素の元の配列でのインデックスを要素とする配列が返されます。
このように2つのAPIドキュメントを見比べてみると、最後の出力のされ方が異なるだけで引数などは全て一緒となっています。
そのため、まずは2つの関数での共通の性質で、ポイントだと考えられる部分を解説していきたいと思います。
np.argsort
は、以下のように使います。
np.argsort
を使用すると、ソート後のインデックスが出力されます。
kindパラメータで指定可能なquicksort, mergesort, heapsortについて
np.sort
、np.argsort
で指定することのできるアルゴリズムはquicksort
、mergesort
、heapsort
の3種類あります。
quicksort
quicksort
は、あるしきい値を元に要素を前後で交換、分割を繰り返しながらソートしていく方法です。非常に実用的で、ソートする平均処理時間も一番短いとされています。計算量の平均オーダーは一様分布な配列を整列する場合であれば、となります。
下のアニメーションはquicksort
が行われている様子です。スタートボタンを押すと、アルゴリズムの動作の様子が分かります。
stable
stable
(安定な並び替え)は要素中に同一の値が複数ある場合に、並び替え前の順序関係が維持されるような並び替え方法になります。NumPyでの以前の実装はmergesort
でしたが、現在はより高速なTim Sort
や基数ソート
が実装されています。
quicksort
は不安定な並び替えであり、最悪計算量が大きくなってしまうデメリットがあるため、そのような場合にこちらを選ぶと効果的でしょう。
Tim Sortはマージソートと挿入ソートの派生形のため、ここではよりシンプルなstableソートであるmergesort
のアルゴリズムについて解説します。
mergesort
は、配列を分割してからまた再び分割したものを結合していくという手法によってソートするアルゴリズムです。
このアルゴリズムは、配列の並べられ方が一様でなくとも安定した処理時間でソートすることが可能です。計算量のオーダーはとなっています。
heapsort
heapsort
は、配列の要素を一旦ヒープ木に格納してから、最大の要素(もしくは最小)の要素を順に抜き出していく手法です。こちらも、計算量のオーダーはとなっています。
それぞれ具体的にどのようなことが起こっているのかは、以下のサイトを参考にしてください。
クイックソート
マージソート
ヒープソート
どのアルゴリズムを使うべきかについては、基本的にはquicksortで良いと思います。ソート済み配列に適用する場合など、最悪計算量が遅くなる場合があるので、そういった場合にはmergesortやheapsortを検討しましょう。
手元のMacbookで実際に計算時間を比較してみます。それぞれのアルゴリズムで長さnの配列をソートする時間を1000回分記録し、その平均と最大を返します。
以上のようなコードをtest.py
に保存して、実行すると、以下のようになります。
今回整列をするために用意したのがランダム配列だったので、安定的にquicksort
が高速な結果になりました。
引数orderについて
例えば、以下のような配列を作ります。人名と個人番号(ID)、テストでの点数をまとめたものです。
この配列で点数について昇順にしたい場合は、order
の出番です。どのフィールドでソートしたいかをorder
で指定します。
同じ点数の人が二人以上出たら、その中でどうソートするかも指定できます。今回は、IDを元に並べ替えて見ましょう。
詳細な使用例
もう少し細かくパラメータを指定してみましょう。axis
で、ソートする軸方向を指定してみます。
np.sortとnp.ndarray.sort
np.sort
と似たような関数としてnp.ndarray.sort
というものがあります。
これは、配列のコピーをソートするのではなく、配列自身をソートする関数となっています。APIドキュメントは以下の通りです。
ndarray.sort(axis=-1, kind=’quicksort’, order = None)
params:
パラメータ名 |
型 |
概要 |
axis |
int もしくは None |
(省略可能)初期値-1 ソートを行う軸方向を指定します。デフォルトはで最も次元の低いところに沿ってソートします。 |
kind |
‘quicksort’, ‘mergesort’ ‘heapsort’のいずれか |
(省略可能)初期値’quicksort’ データの並べ替え方のアルゴリズムを指定します。 |
order |
string もしくは stringのリスト |
(省略可能)初期値None
a がフィールドの定義されている配列であったとき、どのフィールドで要素をソートするかを指定します。 |
配列そのものをソートするだけなので、特に何も値を返すことはありません。使い方自体はnp.sort
と全く同じです。
実際のコードを見ていきましょう。