「チャットボットはこれから来る」と言われ続け、タコスを注文できるボットやお花を買うことができるボット、Twitter上でヘイトを吐くボットまで登場した。しかし、

  • 25億人が使うメッセージングプラットフォームで利用できる!
  • チャットボットで工数削減できた!

といった話が先行してしまい、「なぜ注目されているのか」や「どんな使い方があるのか」が曖昧になってきている気がしたのでまとめておく。

この記事を呼んで、

  • BOTとは何か
  • BOTを注目すべき理由
  • BOTに何を期待すればいいのか

を分かりやすく明確にしてみたつもりだ。これらに疑問を持っている方は是非参考にしてみて欲しい。

チャットボットはこれまでのツールと何が違うのか

これまでも企業は

  • ブログ
  • メールマガジン
  • SNS公式アカウント
  • Facebookページ

などいくつものツールを使ってユーザーとのエンゲージメントを促進してきた。 では、これらとチャットボットの違いは何だろうか?

1方向性が前提だったこれまでのツール

これまでのツールは全て1方向性を前提としていた。各チャンネルを通してサービスや企業の発信したい内容を多くのフォロワーに対して伝えるイメージだ。 もちろん、コメントやリプライなどで双方向性のコミュニケーションが取れることは確かなのだが、全ての人がそうしているわけではない。基本的には一方的にコンテンツを送ることを前提としている。

例えて言えば、焼肉屋さんの店舗では全ての人に対して今日のメニューをお知らせして、クーポンを配信。配信を受け取ったユーザーの3〜4%が実際にお店に行って焼き肉を安く食べることができる。

双方向性を前提としたチャットボット

チャットボットは双方向性を前提としている。BOTはたったひとりのユーザーの声を聞き、そのユーザーのためにメッセージを送る。

BOTはバックグラウンドでサーバーと通信し、ユーザーの情報や他のユーザーの行動を見ることで「あなた」にとって最適なデータを見せたり、行動を促す。

焼き肉の例では、Aさんがホルモン好きだと知っているのでカルビのクーポンではなく、ホルモンのクーポンやホルモンの宣伝文句を伝えることでお店に来てもらう確率を高めることができる。

本質はパーソナライズ

そう、チャットボットの鍵はパーソナライズにあるのだ。機械的に返答するだけのBOTではなく、「私」にとってのパーソナルアシスタントになることがチャットボット普及の鍵である。

私にとって必要なデータだけを教えてくれれば、ものすごくありがたい。

イベントに参加するために外出することをBOTが知っていたら、その日の朝に帰りに雨が降ってくるから傘を持っていくように促してくれたら便利だ。店舗も不要な人にアプローチすることなく、必要としている人にだけメッセージを送ることできるし、ユーザーも気兼ねなく質問を投げかけることができる。

BOTの種類

これまでのところ、チャットボットにもいくつか種類があるようだ。ボットの類型を整理したい。

制御型ボット

ユーザーの質問から、あらかじめ決められた答えを返すBOTだ。事前にダイアログツリーやプログラムを書いて、決められた通りに沿って返答していく。 自然言語処理を使ってユーザーの意図を掴んで返答しているものもあれば、ランダムで返答をするようなものまで幅広い。

といった便利ツールを使うことで事足りることもあるだろう。

使いこなすことで、F8カンファレンスでザッカバーグがデモしたお花を購入するようなBOTを構築することもできるようになる。

半自動化ボット

半自動化ボットは人間の労力を出来る限り削減しながら、ボットで出来る限り対応し、人間にしか出来ないことは従来通り人間がやる形態をとっているボットだ。

まだそれほど数は多くない。

徐々に賢くなっていくBOTを採用していれば、同じような質問にはBOTが対応するようにして、まだBOTに分からない質問にだけ人間が答える。といったことも出来る。

まだまだ日本語の自然言語処理も精度が低く、勝手な返答をされるのは不安だったりすることも多いのでFAQをこなすボットはこういった形態をとるものが増えていくのではないかと予想する。

AIボット

完全にAIによって自動化されたボットだ。Microsoftが開発した「りんな」や「Tay」はこの分類に含まれるだろう。

チューリングテストという、アラン・チューリングが考案した機械と見分けがつかないシステムが作られているかどうか判定する試験がある。こういったAIボットにはポテンシャルを感じるものの、実用レベルにまで持っていくにはまだまだ時間がかかるだろう。

AI付き制御型ボット

制御型ボットに部分的にAIの機能を持たせたものがこのAI付き制御型ボットだ。

部分的に商品のレコメンドや配信日時の最適化などユーザーに合わせた最適化を使っている。 今後破壊的な変化があるとしたら、このタイプではないだろうか?

BOTならではの「スケーラビリティ」とチャットならではの「パーソナライズ」の良さを両方上手く利用している。

チャットボット注目の理由は「UI」と「AI」と「検索離れ」

では、チャットボットが注目されている理由はなんだろうか?

一見何も新しくないように見えて仕方がないのだが、その理由は「UI」と「AI」と「検索離れ」だ。

何も覚える必要がないチャットUI

チャットのインターフェースはみんなにとっても馴染みのあるものだろう。25億人もの人が毎日LINEやFacebookメッセンジャーを使っていて、ここにボットを追加するだけだ。

サービスを利用するために毎回新しいアプリをスマートフォンにインストールするなんて誰も望んでいない

これはFacebookのF8でマーク・ザッカーバーグがボットストアを発表したときの言葉だが、すでにみなさんのホームスクリーンには大量のアプリが並んでいるはずだ。ここに焼き肉のクーポンを得るためにアプリを入れて会員登録したいと思うだろうか?

(どっちがいい?)

参照:Mobile app for retail ネットとケータイと俺様

パーソナライズに必要なAIの役割

フォーム入力と違って非構造の自然言語を認識し、パーソナライズした情報を提供するためにはAIが不可欠になる。

チャットボットに求める機能は

  • データを保存する
  • 自分が知るべきデータを知る
  • 意思決定をサポートし、行動を促す

の3点です。このうち一番上はこれまでのソフトウェアが得意としていた部分だった。 下2つを機能させるには異常値検知や変化検知、レコメンドなどAIの技術を使うとより賢いボットが出来上がるでしょう。

若者の検索離れ

若者は徐々にGoogleで検索しなくなり、SNSを活用し始めた。

要約すると、

  • 操作された検索エンジンへの不信感
  • リアルな口コミの信憑性
  • 検索結果に不満足

この3つが検索離れの要因なんじゃないだろうか。そこで、新しく検索するプラットフォームとしてBOTの可能性を模索しているのかもしれない。

友達に聞いても分からないものはBOTに聞くという流れになってもおかしくないと考えているのではないだろうか。

BOTとユーザーを近づけるために必要なデザインの役割

BOTを普及させるため、AIをユーザーに近づけるためにはデザインの力が欠かせない。 何しろ、キーボードで文字を入力するのはボタンを押すよりも面倒くさいことがある。

メッセージを打つ面倒くささをいかに省けるかが肝

FacebookのメッセンジャープラットフォームではボタンなどのGUIをサポートしている。

Bookmark Itemとスマートフォンのキーボードを立ち上げ、文字を入力するよりもボタンを押す方が速いだろう。他にもカレンダーなどを追加してGUIのいい部分はチャットボットに持ち込んで各プラットフォームで標準化されればもっと便利だ。

音声認識の精度向上と共に期待しよう。

各社プラットフォームの戦略

チャットボットに対してプラットフォーム各社の見方はどうなのだろうか。

Microsoft

Skypeをチャットプラットフォームとして持つマイクロソフトは Build2016でMicrosoft Bot Frameworkを発表し、

  • ルールベースの自然言語処理
  • 機械学習ベースの自然言語処理

を開発者にも使いやすい形で提供している。

マイクロソフトのCEOナデラはチャットボットの勝敗を決める重要な指標は

  • 会話やチャットベースのプラットフォーム(Skype、Outlook、Office、Cortana)
  • 人工知能(20年以上まえから着手)
  • ソーシャルグラフへのアクセス(LinkedInを買収した)
  • 人工知能を扱えるプラットフォーム(Xbox、Windows)
  • デベロッパーのネットワーク

とし、総合的に見ると全てを所有しているマイクロソフトが未来をリードしていく運命にあると豪語している。

Facebook

Facebookのボット戦略は「開発者やユーザーの可能性を広げる」という方針で進めているのだろう。すでに9億人もの利用者のいるメッセンジャーはいずれにせよ有利だ。

GUIのボタンやカルーセルなどのウィジェットが充実している。 FacebookのメッセンジャープラットフォームではUberのタクシーを読んだ後、どういう道のりで乗車位置に行けば良いのかを視覚的に教えてくれる。

さらに個人間送金も出来るようになっている。ザッカーバーグは決済で儲けるつもりは無いそうで、ECの支援と広告ビジネスに繋げるつもりだそうだ。

Google Allo

広範囲で利用されている会話プラットフォームを持っていなかったGoogleはメッセージングアプリとして多様な表現方法を可能にしたアプリの提供を開始した。

ビデオを見てもらうと分かりやすいのだが、絵文字や絵の中で落書きをしたり、小声や大声といった表現ができるようになっている。簡単に返答できるよう、AIが推測して返答候補を出してくれる。

その後、レストランの予約を@googleのボットにしている。Alloにはボットは@googleしかおらず、スレッドの会話に割り込んできて各種サービスを提供する形になっている。ここでもアプリと同じように何百体ものボットを人は管理できなくなるという未来が来ることを事前に察知しているのかもしれない。

Slack

日常会話向けのメッセンジャーと違い、ビジネス向け中心のSlackでは「生産性」と「仕事の簡略化」を目指している。

1対1が中心ではなく、グループで使いやすい機能が整っていることが求められているため、ボタンを押すと押した人のユーザー名一覧をコメントに表示する機能がある。

LINE

LINEのbotプラットフォームはまだベータリリースで先着で提供している。「BOT STORE」の開設も計画中だそうだ。

まだまだテキストや画像を送ることしかできない。

国内では敵なしなので、どういう機能を提供すれば良いのかは海外の例を参考に随時開放していくのだろう。

2016/9/30更新

LINEはMessaging APIの更新をして、Facebook風のウィジェットを備えてBOTのオープン化を発表したようだ。

LINE BOT AWARDSという賞金獲得できるイベントもあるそうなので、興味のある型は試してもいいだろう。

まとめ

いかがだっただろうか。

各社ボットに注力しているかが分かることだろう。そして、なぜボットが注目を集めているのか。そして、どのようなボットが存在し、各社の戦略を分かりやすく解説したつもりだ。

この記事が何かのお役に立てれば幸いだ。

参考